近年、異常気象やゲリラ豪雨という言葉を耳にすることが増えてきました。突然の雷鳴とともに空が真っ黒に染まり、ものの数十分で道路が冠水する…。そんな光景はもはや珍しいものではなくなっています。
しかし、私たちが普段あまり意識していない場所があります。それが「地下駐車場」です。
2025年9月12日に三重県四日市市で1時間に123.5mmという猛烈な雨が降りました。その影響によって四日市市中心部は浸水し、地下駐車場のくすの木パーキングが水没する事態となりました。
普段は便利で快適に利用できる地下駐車場ですが、豪雨時には一変して“命を奪う危険な空間”になり得るのです。
なので今回は、地下駐車場の危険性についてご紹介します。
便利さの裏に潜むリスク
地下駐車場は、都心部や大型商業施設、マンションなどでよく利用されます。地上の限られたスペースを有効活用でき、雨の日でも濡れずに車へ乗り降りできる点が魅力です。
しかし地下という構造上、水が自然に流れ込む“受け皿”になりやすいという特徴があります。地表より低い位置にあるため、集中豪雨の際には道路や排水溝から一気に水が流れ込み、あっという間に冠水してしまうのです。
豪雨時に実際に起こること
気象庁や自治体の報告を見ても、地下駐車場での水害事故は少なくありません。例えばゲリラ豪雨で短時間に100mm近い雨が降ると、排水ポンプの能力を超えてしまい、わずか数分で床が水に覆われることがあります。
一度水が流れ込むと、地下駐車場は“水槽”のような状態になります。水位が急激に上がるため、取り残された人が逃げ遅れるケースも少なくありません。ドアを開けて避難しようとしても、水圧でドアが開かなくなることもあり、大変危険です。
命を奪う三つの要因
では、なぜ地下駐車場での豪雨はここまで危険なのでしょうか。ポイントは大きく三つあります。
- 水位上昇のスピード
- 平地の冠水はじわじわ進みますが、地下は一気に水が流れ込むため、逃げる時間がほとんどありません。
- 閉鎖空間による逃げ道の少なさ
- 出入口が限られており、ひとつしかない場合も多いです。その出入口が水で塞がれたら、逃げ場を失います。
- 車による足止め
- 車を守ろうと咄嗟に動かす人がいますが、その間に状況は悪化。命より車を優先してしまい、避難が遅れるケースが後を絶ちません。
「クルマを守る」より「自分を守る」
実際に過去の災害では、地下駐車場で車を移動させようとして水没し、命を落とした例があります。クルマは買い替えられますが、命は取り戻せません。
豪雨時には「まず自分の命を守る」ことを最優先に考えてください。クルマが浸かるのを見ても、決して戻ってはいけません。
事前にできる備え
では、利用者としてできることは何でしょうか。
- 天気予報のチェック
豪雨や警報が出ているときは地下駐車場の利用を避ける。6月から10月は特にゲリラ豪雨が発生しやすい。 - 駐車場所の確認
地下駐車場に停める際は、管理者に「浸水履歴」や「排水設備」の有無を確認しておく。 - 避難経路の把握
出入口がどこにあるかを日頃から意識しておく。 - 車両保険の確認
水没に備えた補償内容をチェックしておく。
管理側に求められる対策
利用者だけでなく、施設管理者の備えも重要です。
- 排水ポンプの点検・強化
- 止水板や防水扉の設置
- 豪雨時の利用制限
- 利用者への迅速なアナウンス
実際、近年では新築マンションや商業施設で「止水板」の導入が進んでいます。しかし古い施設では対応が不十分なケースもあるため、利用者自身が意識することが大切です。
実際に豪雨に遭遇したらどうする?
- 水が流れ込んできたら即避難
→ 車を動かそうとせず、出口に直行する。 - 水位が足元まで上がったら
→ 躊躇せず水の中を進む。ヒールや荷物は捨ててもいい。 - 車内に閉じ込められた場合
→ 水圧でドアが開かない時は窓を割るしかない。脱出用ハンマーを常備すると安心。
最後に
地下駐車場は便利で快適な空間ですが、豪雨時には一瞬で命を脅かす場所に変わります。
「自分だけは大丈夫」という過信が、最も危険です。
普段から天気情報に気を配り、豪雨が予想されるときは地下駐車場を使わない。
もし水が流れ込んできたら、迷わず避難する。
それがあなた自身と大切な家族を守る一番の方法です。